今年のゴールデンウィークもおじいちゃんとおばあちゃんの家に遊びに行った。
信州の小諸にあるお家だ。私は長いお休みなると必ず家族でここにくる。
峠の中にあるので自然がいっぱいでとても気持ちがいい。
虫もたくさんいるけどすっかり慣れてしまって、
学校で虫が出るとみんなはきゃあきゃあいうけれど、私は全然平気な子になってしまって、
友達にユキちゃんは強いねぇ、なんて言われたりする。
自然がいっぱいで気持ちがいい場所ではあるけど、wi-fiも届かないしテレビもあんまり映らないので、あんまり長いこといると退屈な気持ちになっちゃう。
やることがないから、一日中本を読んだり絵を描いたり、
夕方に連れて行ってもらえるイオンが唯一の楽しみ。
おじいちゃんとおばあちゃんは普段は二人で碁を打っているか、
おじいちゃんが一人で詰将棋をしているか、油絵を描いているかなんだけど、
その日はおじいちゃんはいつもと違うことをしていて、
暇な私はその側でごろごろしていた。
「ユキちゃんは俳句をしたことがあるか」と聞かれて起き上がる。
「学校で習ったよ」と私は答えた。
五七五七七のやつでしょ。松尾芭蕉とか習った。あんまり面白いとは思わなかったけど。
どうやらおじいちゃんは俳句を作っているらしい。
あれって、普通の人でも作るのか。
っていうのが最初に思ったこと。
なんか才能のあるその道のプロの人が詠むものだと思ってた。
私もやるかと聞かれたけど、首を振った。
考えたって何にもでてこないもの。
だけど、おじいちゃんが書いたものには興味があったので
書きかけ?のものをのぞいてみた。
学校で習った俳句には五七五七七のリズムにするっていうルール以外にも
季語を入れるっていうのがあったなぁと、
国語の成績が優秀な私は思い出したりした。
でも結構五七五七七じゃないものもあるなぁと思って聞いてみると、
字余り、字足らずで書いてもいいんだよとの答え。
まあ、いいんだろうけど私的にはすっきりしないなぁ。
季語もわかるものもあるけどわからないものもある。
どうやらおじいちゃんは今の季節の俳句を書いているようで、
「五月晴れ」とか「五月雨」はとかそんなのは読めるけど、
「袷」とか「薫風」とか「走り梅雨」とか読み方もわからない。
気になったので、お母さんのスマホを借りて調べてみることにした。
Wifiじゃないからすごく時間かかるけど。
袷はあわせ、着物のこと。走り梅雨ははしりつゆ、つゆの前にくる雨のこと。
薫風はくんぷう、五月の爽やかな風。
じゃあおじいちゃんの俳句にある、風薫る、は5月の季語ってことなのか。
「かぜかおる」とかアニメの主人公の名前みたいで綺麗だな。
あ、ちょうど5文字になるから俳句にはぴったりだ。
そのまま調べていると「風薫る」は元々は漢語の「薫風」からきていて
「花の香りを運んでくる春の風」という意味だったのだけれど、
それが「風薫る」という和語になって「初夏の若葉の中を通ってくる爽やかな風」
という意味に変化したとかいてあった。
5月といえば春なのに初夏の季語であるってかいてあってびっくり。
おじいちゃんになんでって聞いてみると、
昔の暦は今と違うから5月は夏に含まれるんだって。
確かに3月とか4月とかの春の風だったら花の香りがぴったりだけど、
5月になると若葉の香りがぴったりなのかもしれない。
見出し2 『風薫る』は五月によく使われる季語の一つ!
そんな感じで調べているとすっかり楽しくなっちゃって、
気がついたら「風薫る」使った俳句がどんななのかまで調べてた。
もちろんおじいちゃんの俳句も悪くはないけど、
やっぱりおじいちゃんじみている。
私はあんまり難しいのはわからないけど、眺めていてなんかいいなって思ったのもいくつかあった。
薫風の ありなれ渡る 光かな 内田百間
これは「ありなれ」って響きがなんか面白い。
「ありなれ」って何?ってなって調べたら「大いなる藍色、緑色」という意味なんだって。
えー、全然藍色とか緑色を思い浮かべることができない。
でもなんだか面白いし可愛い。
いいお天気の五月のある日、大きな木の下で寝転がって空を見ていたら
緑の匂いのする風が、さーっと吹いてきて、大きな木の葉っぱの間から
お日様がきらきら光ってる、そんな感じかな。
もうお昼ごはんも宿題もどうでもよくなって、そのまま眠ってしまいたくなるような感じ。
もう一つは
楽しさの 生まれゆく風 薫るとき 稲畑汀子
5月は私のお誕生日の月。
小さい時からケーキにはいちごを乗せてもらってる。
お誕生日プレゼントは何にしてもらおうかは、もう春になってからの一大関心事だし、
5月は4月のクラス替えで出会った新しいお友達とも打ち解ける時期。
遠足や運動会はちょっと面倒くさいけどそれでもお友達ときゃっきゃしながら
楽しめる行事が盛りだくさんだ。
つまり5月にはワクワクすることがつまってる。
そんな気分になる俳句だなって思った。
すっかり夢中になっているとおじいちゃんがお片づけを始め出した。
熱心に読んでいる画面を覗き込んで、そんなに真剣に見てるなら、
今度来た時は句会に参加するか?と聞いてきた。
どうやらおじいちゃんみたいな人が集まって俳句を作る会があるらしい。
ほんの数時間前ならまっぴらごめんだと思ったけど、
今はちょっとのぞいてもいいと感じる。
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